訳者のひとり言:「やっと出ることになったあ!」
....帯に書かれる予定のコピーは「問題を分析するな!解決に向かって一直線に進め!」となっていて、私としては、この本をやっと日本で出せると思うと感慨深いものがある。この本を日本で出版するまでの道のりは決して一直線ではなく、どちらかといえばロングアンドワインディングロードという感覚だった。初版が2002年のこの本を知ったのが2003年。2004年にイギリスまで著者に会いに行きセミナーに参加、2005年に日本で初めてソリューションフォーカスに特化したサービスを提供する株式会社ソリューションフォーカスコンサルティングを設立、という流れの中で、実は2004年から2005年にかけて、いくつかの出版社にこの本の翻訳の企画を持ち込んでみた。その中にはダイヤモンド社も入っていた。しかしその時の結論は、内容はいいが「時期尚早」というものであった。
....それが今回は出版社の方からのお申し出をいただき、この本を出版できることになった。時代の流れは確実にポジティブアプローチの方向に傾いている。ASTD(American Society for Learning & Development)の年次大会でも不足分に注目するギャップアプローチではなくポジティブアプローチへの注目度が高まっていると言われている。
....これは私見だが、ソリューションフォーカスのような人にやさしい手法が企業社会に取り入れられることは時代の必然ではないだろうか。科学技術文明、消費社会の発展がもたらした恩恵は大きいが、負の側面も大きい。ソリューションフォーカスが提案するものは、人間的なものを犠牲にして何かを発展させるのではなく、人間を大切にすることが発展につながるあり方だ。セラピー手法から生まれたコミュニケーション・テクノロジーは会社、社会を癒しつつ、持続可能な発展をもたらす方向への促進剤となり得ると信じている。
....本書の中身は癒し手法でもなければ、単なる傾聴やプラス思考というのでもない。実際に組織が成果をあげていく上で、そこに関わる人々の意識をいかに「欲しくないもの」ではなく「欲しいもの」に焦点づけするか、そのためのコミュニケーションをどうとればいいのかに関して、具体的ですぐに実行できるシンプルな手法が提示されている。
....ソリューションフォーカスはすぐにどのようなレベルででも使い始めることができる。既に日本でも私の知人で、本書の英語版を読んだだけでソリューションフォーカスを実践し始めて、赤字会社を黒字会社に転換した経営者もいる。また弊社主催のソリューションフォーカス基礎コースや実践コースに参加した方たちが、組織の現場で様々な成果をあげている。それらの成果に関しては2008年4月27日のJ-SOL ONE(日本初のビジネス版ソリューションフォーカス事例共有大会→リンク)にお越しいただき、直接確認していただければ幸いである。
....ある意味、本書の出版までの過程は曲がりくねった道のようでいて、これで最短最適のタイミングだったのかもしれない。何で出版できないんだろうと考える代わりに、それならできることをということで、自分で本を書いたり(「解決志向の実践マネジメント」)、公開セミナーや講演などで啓蒙を試みてきた。その努力の延長に今回のお話しをいただいた。
ソリューションフォーカスの広がりもここから新たな段階に入るのではないだろうか。
....“SF inside”というマークをつけた企業は、従業員の可能性を最大限に活かし、メンタルヘルスの問題も少ない、そして何よりも社員が安心して活き活きとしている。そして新卒も途中採用の人間も”SF inside”マークをつけている企業を希望する。そんなSolution Focused Organizationの到来を夢見つつ、本書を紹介できる喜びを味わっている。
本書の邦訳出版を可能にしてくださったダイヤモンド社、渡辺考一氏、石田哲哉氏に心より感謝申し上げる次第である。
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